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ガラスの風景/バビロン

星組大劇場公演・・11/22~12/24

星組大劇場公演「ガラスの風景/バビロン」。面白いのに公演期間は短いし、忙しいし・・。と慌ただしい気持ちの中、それでも前楽を含め5回観劇し、何とか堪能できた気にはなりました。それでもあと1、2回は観ても良かったな・・(^_^;)。

「ガラスの風景」柴田先生脚本、謝先生演出の最新作。「宝塚では珍しいサスペンス=私にとってあまりなじみのないサスペンス」という事で(^_^;)、あまり犯人は誰だろう? とか、トリックはどうなんだろう? など思わずに、「皆、どんな役をしているのかな~?」といういつもの姿勢で見ていました。
初日明けすぐの日曜日に観劇したにもかかわらず、私が観るまでに周りのほとんどが既に観劇していて、「犯人は言わないでね」と皆に言っていたに、うっかりものの伯母が名前を漏らしてしまったので、内心犯人の察しがついていたというのもあるかもしません(やはりその通りでした^_^;)。

そんな訳でサスペンスを楽しめた気はしないのですが、私にとっては何よりも大切な「出演者の持ち味に合った作品」を今回も期待通り作ってくれた柴田先生に感謝。主演者はもちろん、周りの配役も魅力的。かなりの若手にまで活躍の場があったのも嬉しい。
マンドリン弾いている人とか、バトン・トワリングしている人とか、ピザ回している人とか・・(^_^;)。それぞれの生徒をチェックしているだけでも退屈はしませんでした。

ジョーイ・バクスターの香寿たつきかっこ良かった~(笑)。私は「プラハの春」の脚本も、香寿に堀江の役を当てた事も、ついでに衣装がゴルチェな事も(^_^;)、あまり好きではなかったので、ラストに本当に素敵な男役を見せてもらえて嬉しかったです。そう思えるから、この作品が好きなんだと思います。

冒頭シモンズ家の夜会に登場した時のスラリとした紳士振り。ピッコラ(鈴鹿照)&アルト(未沙のえる)でなくても「おいしそうな男~」と言いたくなるムードが溢れています(^_^;)。
クララ(仙堂花歩)をなぐさめるのにギターを弾き語りするのも素敵。甘く優しい声が生きていますね。さらにリーザ(秋園美緒)に誘惑されるシーンも大好き。
全体的に演り過ぎず、押さえた大人の男性像を見せてくれているのが良いのだと思います。あまり濃い香寿は好きではないので・・。

でも、ローラ(渚あき)に「恋してしまった(←この台詞「琥珀色の雨にぬれて」で連発されるだけに再登場には笑えました^_^;)」後は、たっぷりと心情を吐露する場面や台詞が用意されていて、演技のし甲斐もあっただろうな、と思います。

色々な経験を積んだ人生の歩み(^_^;)が見えるような気がするのが、素晴らしいですね。今の香寿だからこその、男性像だと思います。大抵のタカラジェンヌでは、あそこまでリアルには出ないのではないでしょうか。
作品中でも香寿らの大人たちと、朝澄けいら若者たちのグループが何度か対照的に扱われていて、それぞれだからこその哀愁のようなものが伝わってくるのも、この作品の独特な所で好きです。

ローラのも、香寿同様、ラストにたっぷりと心情を吐露できる役で、良かったね~、と思いました。
「女優をやっていた」という設定、しかも「演技派だった」という設定で、その事を語る件など、まさに演じるのが渚だからこその台詞であろうと思います。しかも、ラスト「またがんばっていこう」という流れになっているのには、「渚にもそう思って欲しいから」という柴田先生のはげましではないかしら? とまで思います。

一度あきらめた女優の仕事。でも、一番やりたいのは女優の仕事。結婚して、優しい夫がいて、その人たちの為にも、もう踏み出すべきではないのが当然だけれど、一度の人生、ダメになってもやってみたい・・という気持ち。私は分かる気がします。
ラストの独白、「信じている」と胸を張って去っていく件、気持ちよくて好きでした。
ちなみに私も、この後ジョーイはローラの元へ行けないだろうと思います。そう思うと余計、悲しいですけれど・・。

クレマン氏の初風緑。銀縁の眼鏡で知的な大学教授。落ち着いていて素敵でした。
リーザの秋園。ラストに素晴らしい役でしたね。台詞の声の美しさが流石で、立ち姿、振る舞い方も上手く、説得力がありました。
ヨットハーバーで、ベンチ(?)に座っている姿が良かったです。

ミラー警部の安蘭けい。台詞良し、歌良し、上手く演じているけれど、やはり見た目に大人の役は似合わないなぁ、と最初の頃は思っていたのですが、後になる程自然に見えてきました。さすが安蘭も上級生になったなぁ・・と(^_^;)。
でも一番好きなのは、ピエトロ(夢輝のあ)達やジョヴァンニ(鳴海じゅん)との絡みで見せてくれる、機転の効いたお笑いセンスかも(^_^;)。

そのピエトロの夢輝は最後に等身大の明るい役柄。本来のイメージ通りで、可愛い所が観られて嬉しかったです。ラストにはちゃんと良い台詞もあって、良い所で歌も歌えて、良かったですよね。
ジョヴァンニの鳴海も今回がラストで残念~。台詞が聞きやすいからこその、あの役かな。キレイにセットされた髪型も流石で可愛い(^_^;)。
ピエトロの仲間たち(叶千佳・祐穂さとる・柚希礼音)も楽しそう。特に祐穂は大抜擢だと思いますが、上手くて感心。
柚希は幕開きのコロスの一発芸(コラコラ・・)が素晴らしい~。バランスもパンシェもきれい~(*^。^*)。

マリオの朝澄はキレイで品よく、「御曹司」を地でいっていますね(^_^;)。クララの仙堂は上手い。新公評でも書きましたが、もう少し垢抜けてスッキリすると楽しみになるかも・・。レオナルドの真飛聖はやっぱりまだ何か動きが不自然で面白い(^_^;)。ピアの陽月華もユニーク。スタイル良いしキレイだけれど、あそこまでカラリと演技する娘役は珍しいと思います。

若者たちグループの「ケセラ」も、センター付近に退団者が多いこともあって、思わず感傷的な気分になってしまう場面でした(;_;)。

「バビロン」荻田先生のショー。「パッサージュ」も好きでしたが、「バビロン」も良かったです!
若手ながら既に確固たる独自の作風を持っている事に感心します。歌詞を聞いていると「相変わらず病んでるな~」と思うのですが(^_^;)、こんなにアブノーマルな作品が宝塚で許されるのだろうか? とも思うのですが(^_^;)、実際に舞台でやっている事自体は決して一線(=スミレコード)は越えていないんですよね。

美しい衣装を着て、歌い、踊るタカラジェンヌ達を通して、耽美で妖しく美しい、ファンなら誰もが感じている宝塚の魅力、でも表向きは強調しなかった魅力(^_^;)、に臆面なく踏み込み、つき進んで見せているのがすごいと思います。こんな事を書いて、歌劇団の頭の固い誰かが彼の作品に「待った」をかけないであろうか・・内心、怖れる所です(^_^;)。
宝塚を全然知らない人が観ても、芸術的に面白いんじゃないかという気もしました。売出せば一般的に流行りそうな気もするのですが。

この作品も舞台の色々な所で意味のありそうな事が展開されていて・・。ハマリそうですね。ついついよそ見をしてしまって、面白い所を見逃してしまう事、度々でした(^_^;)。

ショーで印象に残るのは朝澄の白い鳩無垢な白い鳩は朝澄そのもの。あの役が朝澄以上にハマる人はそう出ないだろう、と思いました。そう思うと、得難いものを持ったスターさんでしたね。

高宮千夏も芝居にショーに、沢山歌を聞かせてくれましたね。特にヨットハーバージョーイ主催のパーティでの歌が良かったです。
同じく毬丘智美も退団。ラストに思い切り芝居もショーも楽しんでいるのを感じました。

それにしても、ちゃんとプログラムや「歌劇」誌の座談会なども読んでいなかったので、芝居のラストの「アリヴェデルチ」の声が退団者のものだった事とか、ショーの最初の歌声が香寿の声だった事を、全ての公演を観終わってから友人達に聞いて、初めて知ったんですよ~(後悔)。
もっと色々公演のことを知って、たっぷり浸りたかった公演でした。あぁ~、残念(;_;)。

 

 

運良く前楽も観られましたので、サヨナラショーの感想を。

まず、流石オギー(荻田先生)と思いました。さっきから褒めまくっていますが、別にオギーフアンではありません(^_^;)。

今回は英真なおき組長の「たーたん(香寿)の好きだった星組のお稽古風景を、ちょっと覗いてみましょう。」みたいな紹介の後、舞台でウォーミングアップしている下級生たちが板付き。バックに退団者たちを中心としたメンバーの日常会話が流れます。
鳴海って、本当に「かんちょー」と呼ばれていたのね・・(^_^;)。

皆の「おはようございますー」の声の中、香寿登場。ナンバーを、覚えている所で挙げてみると(曲名の不正確な所や、記憶違いがあるかもしれません・・)、「ベルサイユのばら」より「心の人オスカル」。フェルゼンのナンバーもあったような・・。
「プラハの春」より「モルダウ」で黒エンビのダンス。主題歌をとデュエット。
そのまま「この恋は雲の涯まで」や「セ・ラムール」もあったと思います。「秋・・冬への前奏曲」のカレルの歌もありましたね。順番が違いそうですが・・。

その後夢輝が「イーハトーヴ・夢」の主題歌を銀橋ソロで。嬉しい~。
が「ミケランジェロ」の「愛・アモーレ」を役そのままの衣装で。私もこの役のあきちゃん、そしてこの衣装のあきちゃんが好きだったので、納得の選曲。

香寿が「アムール」の歌(何のショーだったかな・・おそらく雪組時代大階段で歌っていた、聞き覚えている曲です。)を歌いながら、銀橋からバラの花を客席へ。本舞台では朝澄秋園がデュエットダンス。毬丘、鳴海、高宮がセリ上でコーラス。

そのまま幕前で秋園の「リリー・マルレーン」、真飛登場で朝澄とデュエット(?)というか、一緒に踊っていました。朝澄の顔があまりにも清々しくて、残された真飛の表情が何とも可哀想で、ここが一番泣けたかも。

そして待ってました!(かな?)「凍てついた明日」のナンバー。そして安蘭の「ブルース・レクイエム」も。ここ一番にこの作品、そして安蘭のこの歌(^_^;)が来る所が、月影瞳の「Over the Moon」とかぶるんですよね。そして香寿の会話が入ったりして。凝ってます。ここが流石オギーなのです。

ラストは「I remember you」。意外だったけれど、「Let's JAZZ」は私も大好きなショーで、特に香寿のこの歌が大好きだったので嬉しかったです。

(満足度 ★★★★)

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