愛 燃える / Rose Garden
雪組/宝塚大劇場10/5~11/12・東京宝塚劇場1/2~2/11
■ ふぶき |
Date: 2002-02-08 (Fri) |
岡田ロマンチックレビューの特徴と言えば「上品さ」と「おっとり感」。さらにクラッシックとポピュラーの融合ということになるだろうか。若々しさと落ち着きの同居。どの年代の人にも受け入れられる・・・それが岡田デビューの真髄だと思う。
しかし、一言でいえばその「岡田作品」と轟悠との取り合わせはあまりよかったとはいいがたい。轟のダイナミックさと強さは「上品さ」や「落ち着き」とは相反するものであり、他のメンバーはともかく、轟が出てきただけで、雰囲気が変わってしまう・・・・そんなレビューだった。
特に「薔薇戦争」の場面は、吟遊詩人の絵麻緒に華やかな朝海・立樹らのダンスが明るく包むのだが、轟の王様が登場すると急激に「戦争」の匂いがただよい始め、殺伐としてしまったのにはまいった。ゆめゆめしさが消えてしまい、さっきまでの「愛燃える」の続編でもやっているのかといったムードが。
次の「アラビアの王子様」の貴城は生まれたての王子様のように初々しく華やかで美しく、月影瞳がすっかりかすんでしまったほど。音月の妖精も可愛らしく、自信たっぷりにやっているところがよかった。
これが最後のトップコンビというわりには轟と月影の絡みが少なく、見せ場に欠けていたし、フィナーレのデュエットダンスにいたっては、轟・月影の4年の集大成と呼ぶにはあまりにも寂しくて、さっぱりしすぎのような感じがする。轟悠がトップとしてここまでやってこれたのはある意味、月影瞳が相手役だったからであり、それを思えばもう少し舞台上で「優しさ」を表現してもバチはあたらないぞと思ってしまった。
大階段を白い衣装で下りてきた月影瞳。亭主関白な夫によくつかえてくれた。彼女がいたからこそ、「男役」轟悠はカリスマ性を発揮できたのだと思う。一時期観客動員が少なくて心配された雪組を、頻繁な組替によるメンバーの入れ替わりを、常に冷静に温かく迎えてくれた月影瞳。「雪組のおかみさん」としての存在感はピカイチだった。「古きよきトップ娘役」を体中で表現してくれた彼女に拍手を送りたい。そしてどうぞ幸せにんって欲しい・・・・
■ ふぶき |
Date: 2002-01-28 (Mon) |
轟悠の雪組トップとして最後の作品というよりは月影瞳のサヨナラ公演と
いう趣の方が強かったこの「愛燃える」私的には結構楽しめました。
「これ、本当に酒井作品なの?」というくらいに脚本がちゃんと出来てい
て(あくまでも『砂漠の黒薔薇』や『浅茅ヶ宿』よりも・・・ですよ)
最後まで盛り上げてくれた点はよかったと思います。
まあ、演出として「我が愛は山の彼方に」と「皇帝」のラストシーンに柴
田作品のエッセンスをたらしたような出来ではありましたし、ラスト以外
は疑惑によって人が殺される以外あまり大きな事件がなく、どちらかとい
うと心理劇のように淡々としていたので、見る人によってはつまらないと
思われたかもしれません。
しかし、問題は脚本の出来というよりも出演者の役に対する理解が足りな
かったという点だと思います。
この脚本は最初と最後で随分とイメージが違って見えます。例えば扶差の
場合、越からの献上品の西施に対し、周りが「スパイだ」というのを「そ
んなことないだろう」と一蹴して西施を側に置きます。愛に溺れて行きま
すがラストでは「実はスパイだということも西施が鳥に地図をつけて放し
たことも全てしっていた」ようなニュアンスになりますね。
范蠡もそうです。前半は国のためには自分を慕ってくれる西施さえ道具に
使う、そのために「美辞麗句」を使う冷たい人物造形になっていました。
しかしラストにはちゃんと約束とおり迎えにきて、「一時だけ待ちます」
という。冷酷なわりには優しくみえる。まるで范蠡のやり方のほうが正し
かったような印象です。
西施もそう。扶差への感情は別として范蠡への思いが「慕っていたから言う
事を聞いた」けれど終わりには「扶差の方を愛していた」ということになる。
つまり解釈によってはどの人物も悪人になったり善人になったりする
「ベニスの商人」のような作品だったといえます。一貫していたのは朝海
ひかるの伍封将軍くらい。
そこで出演者はかなり混乱をしたのではないかと思われます。「私って悪
人?それとも善人?」「今の台詞は本心?それとも本音だけども皮肉?そ
れとも全くの嘘?」
例えば、扶差が伍封将軍を討った時には、伍封を信じなかったような口ぶ
りだったけれどラストに西施に「正かったのは伍封だけ」といいますよね。
この場合、伍封よりも西施への愛を取ったことになるのか、あるいはあの
時は伍封を疑ったけれど、今になってみると自分に忠実だったのは伍封だ
ったと気づいたのかという疑問が生まれます。轟悠がもっと感情をはっき
りと演じてくれればどちらの解釈でもよかったと思うのですが、このあた
り本当に曖昧でした。
それは絵麻緒も月影も同じで、台詞の行間の感情が伝わって来なかったのが
残念でなりません。多分演じ方によっては名作になったかもしれないのに。
(麻路さきの『ダル・レークの恋』みたいに)
また、月影瞳を送り出す公演としては申し分のない役どころの西施でしたが
「美しい」を連発する扶差の轟悠の言葉に真実味がなかったのが残念です。
要するに轟は最後まで「恋」を演じることが出来なかったということです。
4年もの長い間ずっと連れ添ってくれた相手役に対して、少しの思い入れも
見せないというのはどうしたものでしょうね。もっともっと熱く語り、強く
抱きしめてくれたらみる側も盛あ上がってラストで泣けたかも。
それは絵麻緒も同じで、少なくとも星組にいたころはずっと一緒にやってき
たわけですし、バウの相手役でもあったわけですから、最後の「一時だけ待
ちます」の台詞に重きを置いて欲しかった。
「恋」を最も上手に演じていたのは貴城けいでしょうか。いきなり西施に
愛を告白した挙句に殺されるヘンな役でしたけど、目には「狂気」が見えま
した。人間らしかったとでもいいましょうか。
朝海ひかるの伍封はやりやすい役だったわりには感情の高まりが乏しかった
と思います。紺野まひるは型通りの台詞回しで役者としての想像が働いてい
ませんでした。立樹遥・壮一帆はコンビで売り出すつもりなのかずっと一緒
でしたが、しどころのない役。音月は昔の香寿を思い出すような出来。
そしてこれが最後の作品になった月影瞳。今までで一番美しかったです。
貫禄も華も申し分なしです。こういう西施なら「美しい」と連呼される
のもよくわかります。ただ彼女は人を色仕掛けにするようなタイプでは
ないのでその点が轟の演技とあいまって殺伐としました。
(これが白城あやかだったらどんなに色気のある西施だったでしょう)
ともあれ、いつかどこかの組で脚本に手直ししつつ再演して欲しいなと
思いました。
■ マーガレット |
Date: 2002-01-27 (Sun) |
「愛燃える」本公演・新人公演 感想
今回の雪組は、本公演より新公を先に見てしまったという変則的な観劇でした。そこで本公演・新公とりまとめて感想を書いてみようと思います。
悪くないという人、全然ダメという人に分かれる(私の周囲を見るとそのように感じられます(^_^;))今回の雪組公演、私は前者でした。時代物や型にはまった芝居、みえを切るようなリズムが好きなのからかもしれませんが(ですので「我が愛・・・」等結構好き)、あの「砂漠の黒ばら」の酒井先生にしては、上出来なのでは(失礼)ないかと思われました。但し、キャスティングが合っていたかと言われれば、ウーム!となってしまいます。
まず皆が問題にしている、「愛は燃えていたか?いなかったか?」という問題(^_^;)。
新公では「燃えていた」、本公演では「燃えているようには見うけられなかった」というのが感想でしようか。
新公の夫差役の壮さんは恋する青年という様子が良く伺えて、美しい西施が目の前に現れたのが原因で、疑いも持たずに戦いに明け暮れて来た今までの生活を振り返り、虚しくなったり、安らぎが欲しくなったり、迷いが出たりでついには国を傾けてしまったというのが、無理のない流れとして観客を納得させるものでした。ですので「愛は燃えていた」。
一方、轟さんの夫差は、戦いに疲れてちょっとノイローゼ気味の所に(^_^;)、たまたま西施が現れた。
気を紛らす相手、現実逃避の手段として西施を傍に置いた。なので国を滅ぼすことになったのは西施が原因なのではなく、原因は夫差自身にあると感じられました。だから「愛は特に燃えているようには見うけられなかった」。
2人の夫差とも、王孫惟を殺した後、嫉妬して剣を投げるところは、なかなか迫力があり且つ色気もあり素敵でした。
本公演で絵麻緒さん演じる范蠡についても、書き込み不足、中途半端との声を沢山聞きました。
酒井先生・絵麻緒さんの造形した范蠡は、自分の信念にしたがった野心家、女性への愛より自己実現の方に価値を置くタイプという感じだったと思います。いっそのこと色敵のように作ったほうが(ゼンダ城のヘンツオのように)本人もやり易いだろうし、観客にも分かり易かったのかも知れませんが・・・。私の乏しい知識でイメージしていた范蠡は、知略家あるいは越王に仕えた名将ですので、あーゆー感じかなーと思えました。とにかく絵麻緒さんは何をやっても悪人にはみえませんよねー(^_^;)。
ブンチャンさすがにチャムガをやっただけに、あの手のコスチュームが似合って綺麗で、ご馳走様でした。
新公の范蠡、音月さんは、「あなたいったい研いくつ?」と聞きたいくらい、落ち着いてセリフも唄も上手く、また男役の色気もあるなーと思うのですが、いかんせん若く見えすぎました。范蠡を本役さんよりずーっと悪人ぽく作っている割には、顔も可愛らし過ぎますよねー。衣装にもちょっと着られているという感じがしました。これから大人の役をどうこなしていくかが、課題でしようか。
西施の月影さんというより、この西施という人が一番訳が分かりませんでした。王の地図を盗み出して鳥につけて飛ばしておきながら、その直後夫差に「私を信じていらっしゃらないのね」はないでしよう(笑)。
月影さんは中国の衣装がヨーク似合って綺麗でした。しばしば早口になった時にセリフが聞き取れない所があるのが気になりましたが・・・。
新公の紺野さんは、西施の最初の出と、中盤の夫差王の幻想のシーンがとても綺麗で印象に残っています。しかし終盤もう少し、情感がこもると良いのに惜しいと思いました。
伍封の役(本公演:朝海ひかる、新公:天勢いづる)、正直言って新公を見た時、この役めちゃくちゃ美味しいと思いました。こちらが2番手かと思うほどインパクトがありました。新公の天勢さんは、プロローグの時からなりきりで(^_^;)、目が行っちゃってるというのでいしょうか(笑)、やる気満々ねーと思わせてくれましたが、弟 伍友役の沙央くらまさんと共に大熱演、場をさらっていました。大劇場新公の際は、国をのっとるつもりかーのような(^_^;)悪人みたいな所もあったようですが、今回は呉の国を思うひたむきさが伝わって来て、泣かされました。唄も情感がこもって上手かったです。このタイプの男役好みです(^_^;)。
朝海ファンの方には申し訳ありませんが、この役どうみても新公の方が良く感じられました。あのような線の太い役はコムちゃんには似合わない役だと思いますが・・・。
その他、王孫惟役の貴城さんが時代物の衣装が素晴らしく良く似合って美しい!
何しろ本公演も1度しか見ていないので、細かいことは憶えていませんが、1度見た限りにおいては、眠くもならず、楽しめました。しかし2度目からは退屈するカナーという気もしないではありません(^_^;)。
轟さんが随分痩せられたように感じ、前作「猛き・・・」に比べて芝居・ショーともに生彩がないように感じるのは気のせいでしようか・・・。
12月に見た宙組の新公が、いわゆる新人公演らしい新人公演(^_^;)だったので、雪組の新人公演は初主役の壮さんを2番手以下の下級生ががっしり支えて、頼もしくもレベルが高い新公だなーと感じられました。
壮さんは花組時代は綺麗で目立っていましたが、淡々、サラサラというタイプに見えてあまり興味のある存在ではありませんが、どなたかが書いていらしたように、真ん中の魔力というのでしょうかなかなかのもので、唄も音月さんや天勢さんほどは歌えていませんが、声は出ているので、今後期待できるなーと思わせてくれました。
雪組の若手は今後も目が離せないと思わせてくれた新公でした。
■ ひさよ |
Date: 2001-10-28 (Sun) |
ここではかなり不評の^^;「愛 燃える」。
あんまり期待せずに行って来ました。
おもしろかった?と聞かれれば、いまいち盛り上がりがなく、
途中退屈していたのも事実で、おもしろかったとは断言できない
ものの、怒りも感じず(結構怒りを感じる時がある)、もう一回
見てみようかなぁと思ったのも事実です。
主役、夫差王、今回割と辛い評価の方が多いようですね。
確かにこの役は難しい。粗筋を読んだときは愛に溺れて
国までも滅ぼした愛の物語、まさに燃えまくる愛の話しだと
思っていました。でも、そうじゃないですね。
夫差は美姫にうつつを抜かし国を滅ぼしたバカ息子と思われて
しまえばこの話しは大失敗。これが轟さんではなく、例えば
紫苑ゆうさんなら愛に溺れまくった(^^ゞある意味情けない男を
それなりに納得させてくれるように演じたでしょうが、轟さんでは
キャラが違い過ぎます。
私が感じた轟夫差は西施の美しさについ心を奪われたのではなく、
自分の意思で愛した気がしました。愛してしまったのではなくて
愛したかった、愛したと言いますか。
夫差は戦乱の世に生きて虚しさを覚え、心の安らぎを求めています。
それは父親の敵を討つことよりも強く求めています。
安らぎは他人を信じなければ得られることはできません。
他人を信じるには自分を信じられなければできません。
夫差はなんだか自信さえも失っているように見えます。
そんな中、西施に出遭います。「私は人形です」と言う西施の中に
自分と同じ虚しさを感じたのかも知れません。夫差は西施を信じます。
信じようと決めます(ここがポンイントかも)。
夫差を見ていると切ない気持ちになります。「あんたはそんなに人を
愛したかったのか、信じたかったのか」と。
「猛き」の轟さんを見た後では轟さんにしては情けない男じゃないのぉと
も思えますが、強い轟さんばかりも同じ感じになりますので、私としては
「へぇ~意外な役だなぁ」と興味深く見られました。
まっ、夫差は王としては弱い男です。そういう意味では国を滅ぼして当然かな?
絶世の美女、西施の月影さん。綺麗でした。中国物の化粧が似合う
顔立ちなのでしょうか。
月影さんならもっと自分の意思を持った女性として演じられたのでは
ないかというご意見もよくわかるのですが(それこそ星奈さんが得意とする
タイプの女性ですものね)、私は最後に男達の思惑に政治に
翻弄される宝塚の女役として女らしい役をやってくれたのかなぁという
気もします。袖のヒラヒラもあって実に可憐で女らしい。
最後に可憐で女らしい月影さんが見られたのが嬉しい気がします。
王孫惟が執着したのもわかるなぁー。
それに西施も流されてるいるようで、結構ちゃんと自分の考えで
行動してたりもします。
氾蠡の絵麻緒さん。これって悪役ですか?私には悪役には
見えませんでした。確かに西施には冷たいけど・・。
呉との形勢を逆転させる為にはあれくらいやるでしょう。
これも難しい役だと思います。
いっそ、西施を本当に愛していて氾蠡も苦しむ場面でも
あればわかりやすいんでしょうが(ただありがちな役になって
しまうけど)、氾蠡も西施を好きではあったけど、呉を打つという
信念or執念の方が強かったということでしょうか。
氾蠡ってどういう人なのか、あの芝居の中では悪役に徹した
方がいいのか、よくわからなかったのですが、絵麻緒さんは
すっきり格好よく、次のトップとしての期待を抱かせる雰囲気、
姿だったので、なんだかそれでいいかと思ってしまいました。
3兄弟解散でポジションアップの朝海さん演ずる伍封。
初めに朝海さんファンの方、ごめんなさい。
私にはかなり不満ありの伍封さんでした。
まず若く見えたのがいけなかったのか、まだ若造のくせに
夫差の心もわからず(夫差の心情にちょっと同情しつつ
見ていたからかも知れないです)「越王を討て、討て」って
ちょっとうるさいの!って思ってしまった。
君がもう少し夫差の気持ちをわかってうまいことやってくれてたら
もうちょっと違うふうになったんじゃないのぉって。
座談会を読んでみると酒井先生が「伍封は夫差が求める心の
安らぎを男の無神経さで理解できなかった」と言ってるので
そうなんでしょうが、朝海さんに無神経な強引な男の役ってのに
無理がある。もっと無骨なこの人ならそういう夫差の心が
わからないやろなぁって思えるタイプの人ならまた違った
見方ができたかもしれません。
朝海さんには合ってない役だったのかなぁ。
王孫惟を演じるのは「アンナカレーニナ」での好演が記憶に
新しい貴城けいさん。西施が出てくるところから心ひかれている
演技をずっとしてます。甘い雰囲気でそれこそ美姫への愛に
溺れて身を滅ぼしそう。
次期トップ娘役が決まった紺野まひるちゃん。「畜生」なんて
言わせていいんでしょうか・・。別にそんな言葉を吐く必要性は
ない気がするんですけど。次からトップかぁ~ちょっと不安ありです。
■ ベール |
Date: 2001-10-28 (Sun) |
雪組「愛燃える」の新人公演を見てきました。
初観劇の時も少し書き込みさせて頂きましたが、私は結構このお芝居が好きです。不満点・疑問点はあるものの、何か妙にはまってしまいました。そして、新公を見て、更に色々な発見があったような気がしました。本役と新公キャストとの持ち味の違いが大きいのだと思いますが、主演メンバーが本役とはかなり違った雰囲気になっていて、そういった部分も非常に興味深かったです。本公演の感想も書いていないので、本役を少し絡めながら各々の感想を・・・
夫差(轟)の壮くんは、新公初主演。花組時代の新公も見てますが、今一歩決め手にかけるというか、全体的に印象の薄い人というイメージがありました(特に芝居面)。でも、真ん中に立つと変わるもんなんだな~というのが第一印象。荒削りだし不安定な部分も多いのですが、新公らしい勢いがあって、一生懸命さがひしひしと伝わってきます。新公を見て気付いたのですが、夫差というのは、16才で父親を亡くしそれから10年戦ってきた、ということは26歳??それが分かった時、この夫差の行動というものに更に納得がいったような気がします。トドちゃんだと立派な王にしか見えなかった夫差が、壮くんが演じることにより、王としての威厳よりもむしろ淋しさ・虚しさといった部分が強調され、それ故、国を滅ぼしてしまう過程に更に悲しさが漂います。特に印象に残ったのは、劉生(玲・本役:壮)と孫武(聖・本役:立樹)に心情を吐露する場面。母性本能をくすぐられるような、思わず守ってあげたくなるような、そういった不思議な魅力が感じられ、こういった王もありかな、これも一種のカリスマなのかなと思いました。歌は、紺野・音月・天勢といった上手いメンバーに囲まれるとまだまだ不安定ですが、堂々と一生懸命歌ってるのには好感が持てましたし、槍を持っての立ち回りは、今まで立ち回り経験なしとは思えないくらい立派なものでした。
西施(月影)のまひるちゃん(紺野)は、やはり1人新公レベルではない。トップも決まってる娘役に何故まだ新公主役をさせるんでしょう?壮くんのフォロー役かなとも思いますが、白羽以下、千咲・舞咲・山科と見てみたい娘役が色々いるので、ちょっと残念だな~と思います。役としては、ぐんちゃん西施はまだ幼さの残る少女が、国の抗争に巻き込まれ、恋を知っていくうちに段々大人になっていったというような感じだったのに対し、まひるちゃん西施は、最初から結構落ち着いており、感情の起伏が小さいように思いました。それ故、どうも最後のシーンで盛り上がりに欠けてしまった感が否めません。また、お化粧のせいか、顔がきつく見えてしまったのが気になりました。本公演のショーでは、以前に比べて表情が柔らかくなってきたな思っていただけにちょっと残念です。こう書くとどうもいまいちだったようですが、そういう訳ではなく、やはりトップになるに十分な人だなと再認識しました。
范蠡(絵麻緒)の桂ちゃん(音月)は、とりあえず第一印象から「悪い人」(^^;。本役のぶんちゃんは、何をしても悪い人に見えないという特性の持ち主ですが(でも、そこが好き(^^;)、桂ちゃんはあの可愛い顔に似合わず、骨太な男役を得意とする人なんだと思います。実力は、前回「猛き」の新公で実証済みですが、今回もホントに安定していて迫力十分でした。本役に比べて悪い人になった分甘さがなくなってしまい、西施への思いが完全に偽りに見えてしまったのも何か面白かったです。ぶんちゃん范蠡の場合、かすかに西施への想いはあるものの、やはり国へ想いの方が重いんだろうなと感じられたのが、桂ちゃん范蠡の場合は、国が全て女は必要ないという風に見えたんですよね。
伍封(朝海)のいづるん(天勢)は、やっぱり好き~♪あんたは面白い!と再認識してしまいました(^^;何が面白いって、大芝居なんですよ~。ベルばらのねったん(夢輝)ジェローデルのような感じ??(笑)私の双眼鏡がいづるんばかり追っていたせいなのかもしれませんが、伍封の自害のシーンは、あんたが主役!と言いたくなるくらい場をさらってました。(ただの、ファンの欲目だと思いますが・・・^^;)また、トドちゃん・コムちゃんの年齢差に比べて、新公壮くん・いづるんの年齢差があまりないせいで、夫差・伍封はほぼ同年代に見えました。そういう要素もあってだと思いますが、コムちゃん伍封は、王に以前の立派だった王に戻って欲しいという想いが感じられたのが、いづるん伍封の場合、王がもとの王に戻らないなら、俺が何とかしてやろう!みたいな、感じで・・・(^^;ともすると、悪い人に見えてしまいそうなのは、この役としてはどうだったんだろうな~とちょっと気になりました。
王孫惟(貴城)の拓ちゃん(蒼海)は、本役かしちゃん(貴城)があまりに色気のある人なので、ちょっと損してるかなと思うものの、私この人のお芝居好きなんです。演じる人によって脚本を変えることができるなら(^^;、拓ちゃん王孫惟の場合、秘めたる想いを全うできる人のような気がしてしまいます。決して西施への想いが軽いわけではなく、情熱がないわけでもないんですが、秘め続けるだけの忍耐力を持った人という感じかな。西施を見つめる、穏やかさの中に熱さを持ったような視線が印象的でした。
伯否(星原)の麻愛は、相変わらず安定した演技を見せてくれました。とは言うものの、この伯否という人物自体は、私にとって結構マヌケというか意味不明なんですが・・・
柳蓮(灯)の花純は、侍女にしてはちょっと元気すぎる気はしますが、こちらも麻愛同様上手いです。役としては、前回「猛き」の元気なお母さんが好きだったな~
芙容(愛田)の山科、菫花(白羽)の舞咲は、演技云々はおいといて、とりあえず愛らしかった、可愛かった。もう少しきちんとした演技が見てみたいです。
緑妃(愛)の千咲は、別になんてことのない役ですが、こちらも可愛かった。「猛き」の時にお化粧がいまいちだったので、それが改善されていただけでも嬉しかったです。
陳林(美郷)の貴船は、役はまりえさん(美郷)、顔はみやこさん(風早)(似てますよね?^^;)なもので、見てるとちょっと混乱してしまったのは私だけ?(笑)ちょっと小芝居に走りすぎた気はしますが、さりげなく良いです。
伍友(音月)の沙央は、素顔綺麗なのに、舞台顔があまり綺麗でなく残念。でも、まだ研1ですもんね。お芝居は可もなく不可もなくという感じですが、早口になると、ちょっと女の子が入ってしまってました。
今回の新公を見て、私はやはり雪組下級生が好きだな~とつくづく思いました。実力派な桂ちゃん・いづるんの上に、華やかな壮くんが加わってますます見応えがあり、あからさまな桂ちゃんプッシュをせずに、この3人を上手く競わせて欲しいし、上手く使って欲しいなと思いました。
お芝居自体も、主要メンバーの誰一人ととして本役の真似になっておらず、それどころか年齢の問題も相まって、全く違った雰囲気のお芝居になっていたのには感心します。単に雪贔屓だからそう感じたのかもしれませんが、良い公演を見せてもらえたなと思いました。
■ JIMMY |
Date: 2001-10-24 (Wed) |
雪組新人公演「愛 燃える」観てきました。
本公演は一度観劇しただけなので、あまり本役の詳しい演技は覚えていません。
そして、今回再び観ても、私はどうしても、このお話が好きになれません(^_^;)。
また、書こうかどうかすごく迷ったのですが、正直に言うと、まだかなり「血と砂」の後遺症でぼーっとしていて(^_^;)、気持ちが今一歩、舞台に集中できませんでしたm(__)m。ごめんなさい!!
そういう訳で、いつもより(辛口って意味でなく、興奮していないって事で)冷静な文章になりそうですが、まぁ中には、こんな人の感想があっても面白いかもしれません(^_^;)。
新人公演担当は木村先生。「木村先生~?!」と、そこでまず軽い怒りが(^_^;)。「愛のソナタ」の恨みって、恐ろしいです・・。
演出的には、特に、変わった所はなかったような気がしました。
初主演の壮一帆。破綻なく、立派な主役振りでした。
歌は「ルートヴィヒ2世」新人公演や、「エンカレッジ・コンサート」でも悪くないと思っていた通り、安心して聞けましたし、「槍を持ったのも初めて」と挨拶で言っていた殺陣もなかなか。背が高く、手足が長く、槍を持ってポーズをしっかりキメていたのが良かったです。
雰囲気は少し硬質で、優しい雰囲気が「紫禁城の落日」の日向薫を思い出させました。
穏やかそうなイメージよりは、かなり気合いが入っていて、「愛の地獄」の辺りは目線が強く、ハードな雰囲気も出ていて、「おっ?!」と思いました(^_^;)。
西施の紺野まひる。頼もしくなりました。目の化粧を少し強めにしていたのでしょうか? 「魔性の女」っぽい見た目を作るのに成功していたと思います。
范蠡の音月桂。小柄なのがつくづく惜しい、二枚目さんですね~。若手なのに、スターのムードがあります。自分を大きく見せる為か、手を広げて演技をしているのが健気でした(^_^;)。歌も、芝居も、上手いです。
伍封の天勢いづる。この人も、小柄なのがつくづく惜しい。目に色気があり、芝居にクサさがあって、魅力はあります。
王孫惟の蒼海拓。スタイルが良く、独特の愛嬌があって好きな男役さんなのですが、役に求められるヒロインに迫る時の色気が出ないのが惜しい。
伍封を蒼海、王孫惟を天勢で観たかったです。
婉華の白羽ゆり。艶やかで、迫力があって、役にピッタリ。申し訳ないけれど、本役の紺野と代わっても良い! と思います。
伯否の麻愛めぐる。「二日前に声が出なくなって・・」と挨拶で涙ぐんでいましたが、そんな事は全然感じられない、安定した好演でした。大好きな男役さんです(^_^;)。
他では、伍友の沙央くらま。研一ながら、そうとは思えない安定した台詞で頼もしい。ただ、見た目はまだまだ。
芙蓉の山科愛は、芝居も台詞にハートが感じられて、なかなか良いですね。
柳蓮の花純風香、張九の水純花音、前呉王と越王の風美佳希も安定して上手かったです。
最後の挨拶。「猛き~」の時に引き続き、麻愛先導「せ~の」で、皆で「え~りた~ん!」と呼んでいました。
雪組初出演の壮は、たぶん、知らされていなかったようで、頭をかかえてびっくりしていたのが可愛かったです(^_^;)。
挨拶はだんだんしどろもどろになったものの、全体としては落ち着いていて、大人っぽい人だな、と思いました。
それよりも拍手がすごかったですね。立見もぎっしりでしたし。壮って、人気あるのでしょうか(^_^;)?
■ 都 |
Date: 2001-10-12 (Fri) |
大劇場雪組公演「愛 燃える/Rose Garden」を観てきました。
初日明けて3日目、7日に観たのですが、それまでに観た人の感想が歯切れの悪いものだったので、どうしよう~と思いつつ劇場に足を運びました。今回の公演はタイミングがよくて、「歌劇」の対談やあらすじ紹介も読もうと思えば読めたのですが、何せ、登場人物の読み方すらわからない漢字の名前ばかりで(笑)頭に入りゃしない。予習を諦めてそのまま座席に座りました。
それが逆によかったのか、かなり気楽に楽しんで読むことができました。折りしも世は秋の観光シーズン。1階A席には、団体客がたくさん入っていて、ロケットになるとどよめきが上がっていました。そういう方々にも楽しめる大劇場向け作品を、この季節に持ってきたのかな?と思いながら見てました。
さて、感想ですが、まずは舞台とお衣裳。夢々しいロココの舞台の後で、予算も欠乏していないか、観る側もきらびやかな舞台に目が慣れてしまっていないか、と心配していたのですが、全然大丈夫でした。細い金糸をたっぷりとつかった豪奢な幕や袖のセット(常に壁に張り付けてあるあれ、です。名称はわかりませんが)、他惜しげもなく布地を使い、場面ごとに異なるお衣裳・・・。「ベルばら」とは違った豪華さ、宝塚らしい舞台(ハード面)を見せてもらえました。これぞ、宝塚、とうっとりしていました。
予習すらすることを投げてしまった、登場人物とその人間関係は、あら不思議、舞台を観ているとするする頭に入って来て、どういう立場の人間か、どういう想いをもっているかがわかってきました。
最近、私も雪組がお気に入りになってきたので、生徒の見分けがある程度つくようになってきたけど、普段まったく観ない人だと、衣裳の豪華さにも埋もれ、髪型の差もあるんだかないんだか、お化粧も類似していて、誰が誰だかわからなかったんじゃないかなぁと思います(余談ですが、一番最初に月組見た時、B席からオペラ無しで見ていたため、まみさんとりかさん(紫吹淳)の区別がつかなかったという、今では笑い話のようなことがありました)。
その分、人間関係を理解させる、設定を説明することに最初は気を取られていたのか、ドラマにはならず、美しい絵巻物をみているような気さえしていました。やっとお話が動き始めたな、と思ったのが、コムちゃん(朝海ひかる)が弟の桂ちゃん(音月桂)を密使として派遣しようとする辺りからでしょうか。状況に流されていた人々が、やっと動き始めたという手応えを感じました。
本当は、ドラマを動かす役割を果たすのは、主人公・トドさん(轟悠)の役目のはず。夫差の感情や想い、行動が、ドラマを、舞台の上では一国の行く末を翻弄していくところに、切なさややりきれなさを感じて、舞台に引き込まれていくはずなのに、なんだか薄いなぁという主人公であったことは否めません。
今回はちょっとトドさんには不満が残りました。感情表現やセリフが一本調子なので、主人公の薄さに拍車をかけてしまったかも。トドさんはこんなもんじゃない、と思いますので、これからもっと頑張って欲しいと思います。
対応して、ヒロインの西施・ぐんちゃん(月影瞳)も、流されているのか意志があるのか、ちょっとわかりにくかったかな。最初がね、どう思っているのかわかりにくいのですよ。夫差の元に来たことをどう思っているのか。それがわかるのが、故郷での范蠡・ぶんちゃん(絵麻緒ゆう)とのやりとりが再現されてから。このシーンが結構あとのほうなので、それを見て、初めて「西施はこういう想いを抱えていたのね・・・」と理解できるようになりました。
ぶんちゃんは、徹底した冷酷な悪役で、よかったです。もう今後、悪役はやりたくてもできない立場となったのですから、この公演、最後まで徹底して役を極めて欲しいと思います。范蠡の役どころはわからないこともないですし、夫差と対峙する重要な役割。ぜひ遠慮せずに存在感を充分に発揮していただきたいです。
夫差と范蠡、この二人が西施を間に挟んで、物語の上で、舞台の上でしっかりと組んでお芝居をしているのは、組のトップと2番手、そしてヒロインという宝塚では見慣れた風景で、力量もキャリアもほぼ等しい生徒同士のやりとりが見え、やっとしっくりきたなぁと嬉しく思いながら見ていました。
3番手として堂々のポジションを得たコムちゃんは、美しい容姿、立ち居振舞い、役柄的にも堅物ながら感情移入しやすくて、見ているだけでなんだかほっとしました。何より中国風の切れ上がった目尻を強調したお化粧が似合うんですよね~。オペラでついつい見てしまいました。今度見る席が21列上手サブセンターなのでとっても楽しみです(客席から登場するんですよ)。
かしげちゃん(貴城けい)は、いつからそういう存在になっていたんだ~?と思うほど、唐突に西施に愛を告白して、あっさり殺されてしまう。本来は、夫差王の狂気と悲劇の端緒となる出来事のはずが、ちょっと唐突だったので、ぴんと来なかったのが惜しいです。でもそれは本人の責任じゃないでしょうね。
桂ちゃん(音月桂)は、ショーのほうでそれは顕著ですが、抜擢されてました。研4でしたっけね?物語を動かす重要な役どころをきちんとこなしていました。
次期トップに内定したまひるちゃん(紺野まひる)は、ナヨナヨ~、ユラユラ~っとした役ばっかりだった娘役の中で、唯一きりっとした踊り子兼殺し屋役。匈奴出身でしたっけ?動作もきびきびしていて格好よかった!トップ娘役が本当に楽しみです。
娘役では、月組で大好きだったとなみちゃん(白羽ゆり)。やっぱり可愛い、キレイ、雪組にも馴染んでいるわね、と嬉しかったです。彼女が殺されたことが、物語上何も関係なかったのが寂しかったけど(笑)。
そして物語はどんどん、夫差王と呉国の転落への道をたどっていくのですが、まぁ、当然っちゃ当然の結果。ラストの戦闘シーンはなかなか迫力があってよかったです。きれいな赤ときれいな緑の軍隊が舞台上で交差していくのは本当に美しかったです。
最後は、ここぞ、というところにとっておいた盆回し&セリあがりで、夫差の最期を表現して終わるのですが、真っ赤な舞台と屋台崩しに迫力があって、思わず拍手してしまいました。
とまぁ、気楽に“タカラヅカ”を見る分には、おもしろかったと思うんですよ。意外性もない代わりに破綻もない、人物像が深くないといえばそうなんです。全員が深くないので、アンバランスさを感じずにさらっと見られたのがよかったのかな、と思います。
そうそう、もうひとつ、私がつい見てしまったのが、ぐんちゃんのヘアスタイル。お衣裳に合わせて髪飾り、頭飾りを次々変えて登場し、その美しさ、手の込み方に溜息つきながら見てました。ホントキレイでした。
「Rose Garden」も美しい舞台でした。今回の雪組公演のポスターが、それは美しい薔薇の背景だったので、それを舞台装置にもちょっと期待していたのですが、その点では物足りなかったかな?セットだけで見れば、
「愛燃える」の方が豪華でしたね。
そして、印象に残ったのが、ちょっと酷な言い方になりますが、おっちょん(成瀬こうき)を専科に移動させてまでやりたかったのは、このコムちゃんの売り出しと、もうひとつは桂ちゃんの売り出しだったのだなぁということでした。かしげちゃんはまだしもしいちゃん(立樹遙)は割を食ってしまった感じですね。くさらずに頑張って欲しいです。持ち味はまた別だし、桂ちゃんもこれで安泰ってわけじゃないでしょうから。
ショーの方で印象に残ったのは、ちょっとお芝居チックだった薔薇戦争のところ。まひるちゃんとコムちゃんのきびきびしたダンス、見ていて楽しかったです。
黒エンビ・白エンビ・ピンク(だったかな?)エンビが勢揃いし、「パッサージュ」をほうふつとさせましたが、出来はパッサージュのほうが上でしたね。安易にエンビを使うと、組が同じならなおさら、演出や振付けの差が出てしまうから、連続させないのも手かな、と思ったりしました。今度雪組のショーは「NY」がテーマなのですから、きっとエンビは出てくるでしょうしね。
ロケットは、真ん中の娘役さんが目立つ構成になっていて、誰かと思ったら退団する愛田芽久ちゃんだったんですね。真ん中が低くなっているのですが、途中がまた男役生徒が入っていて、二つの山ができてしまっていてちょっと変だった。素直に中低にしておけばよかったのになと思いました。
■ JIMMY |
Date: 2001-10-11 (Thu) |
雪組大劇場公演「愛 燃える/Rose Garden」観てきました。
「愛 燃える」は、原作があると下の前評に書いてしまいましたが、原作ではなく実在の人物の話を元にしているんですね・・すみません~。
途中あまりの展開に脱力、失笑。あらすじを読んで、面白くなりそうだと思っていた私が甘かったです。「砂漠の黒薔薇」に引き続き、サヨナラ大失敗作。よくも・・よくも再び出てきたな~、酒井先生!! 二度と再びオリジナル作りに出てくるなぁ~(怒)。
まず許せないのが、主役にちっとも魅力がないこと。宝塚なんですから、轟悠の雪組トップとしての最後の公演なのですから・・あぁ、もう、ファンが可哀想過ぎて涙が出ます。何なんだ、あの夫差という人物は!
夫差の良かった所と言えば、父の敵、越王を殺さなかったという事だけ。それも台詞だけなので、見せ場にはなっていません。
西施(月影瞳)や伯否(星原美沙緒)の言うがままに政治をする。真摯な家臣伍封(朝海ひかる)を自害させる。西施を慕う王孫惟(貴城けい)を問答無用に切り捨てる。あれでは悪役ではないですか。
轟も「悪い事と知りながら~」と西施に溺れていく色気でも出れば、魅力が出たのかもしれないですが、堂々と落ち着くばかり。
こんなに情けない役だとは! 轟ならではの、力強い王が観たかったのに! ちゃんとトップスターの持ち味くらい理解して作品を作ってよ!!
最後は「皇帝」の屋台崩しと「我が愛は山の彼方に」の崖っぷち紙吹雪をミックスしたような演出。植田先生の方が真似でないだけ偉いです。
一番楽しみにしていたのが絶世の美女西施を演じる月影。しかし残念ながら、姿の美しさには満足できたものの、流されるだけの女性になってしまっていて期待外れ。
范蠡(絵麻緒ゆう)の本心は最初の越の国の場面で思い知らされているのに、夫差に心を奪われているのに、最後まで范蠡(越の国)の為に義務を果たし、夫差を破滅へと導いているのも納得できません。
月影ならはっきりと意志を持って、誘惑を仕掛けたり、後宮の女性達に立ち向かったり、思わずに夫差に心を奪われて、自分の使命と葛藤したり・・そんな生きた女性の姿を見たかったです。「キレイなだけでない強さ」が月影の良さなのですから。
絵麻緒の范蠡は最後まで悪役。結局越の国の為に西施や伯否を利用した、という立場を貫いていて、それだけの役になっていました。新鮮と言えば新鮮で、絵麻緒も頼もしい出来でしたが、二枚目としては物足りない気はします。
朝海の伍封。正義のヒーローで、一番共感できます。
朝海のイメージにしては、渋いハードな役でしたが、歌にも頼もしさが増して、思ったより安心して見ていられました。弟役の音月桂も素直に上手い。
王孫惟の貴城は、中盤を過ぎた頃に突然ソロで「西施を愛している~」(←ちょっと違うかも)と歌い出すのでびっくり。甘いムードが良いです。その後は上記の通り、西施に迫った挙げ句、夫差にばっさり斬られてしまうのですが、貴城が真摯で、色悪には見えないから余計、夫差が悪者に見えるんですよね(^_^;)。
紺野まひるは踊り子婉華。何度か中心で踊る場面がありましたが、キレイで良かったです。伍封に頼まれ西施の暗殺をしようとするのですが失敗し、引っ立てられていく時の「畜生!」の威勢の良さなんて、いかにも紺野っぽい(^_^;)。
でも、引っ立てられた後、どうなったの? 伍封の事はバレなかったの? 影響もないようですし・・放ったらかし?
また、西施の侍女菫花の白羽ゆりに、密談を聞かれた伍封に斬られる見せ場がありましたが、これも次場面の西施や芙蓉(愛田芽久)には・・放ったらかし。
星原が芝居を締めていました。未来優希は何だったのか? 見せ場がなくて残念。
立樹遥&壮一帆コンビは忠実な家臣でイメージにピッタリ。
呉軍のコミカルな兵士、美郷真也&風早優の場面が、回りで芝居していた若手も芸達者揃いで、一番面白かったです(^_^;)。あまりにもイメージ通りの使い方だ、とは思いますけれど。
「Rose Garden」は岡田先生の王道ロマンチック・レビュー。予想通りの構成でまずまずでしたが、衣装の形、色合いが古臭いものが多いのが不満でした。
特に轟の衣装・・エリマキトカゲ型(?)の襟が多すぎます・・。
まずは幕前の「Rose Garden」の吊り物の前で、三銃士(朝海・貴城・音月)が歌います。パステルのコスチュームが三人とも良く似合っていてキレイ!
続く「薔薇戦争」は戦う紺野が美しく、朝海とも似合っていますが、間に入ってウロウロした後に、王冠を受けている轟は何者だったのでしょうか? 二人の屍の上だったので、感じ悪くないですか(^_^;)? 轟は美しかったですが。
「バラの露」もお決まりのメルヘン場面。パックの音月が可愛い! スーツ姿になるとまだまだですが。
アフロディテの月影は「魅惑2」そっくりのシュツエーションですね。王子様で登場の貴城が美しい! この配役は嬉しいです。
ズボンの中生地をモコモコさせていたのが「かしげちゃん(貴城)」って感じで、スキが見えるんですけれど(^_^;)。お芝居の西施に迫る場面でも、帽子をズラしていましたし・・惜しいっ(笑)。
「間奏曲」は朝海から絵麻緒の歌い継ぎ。二人とも上手くなりましたね~。
続くタンゴ「ジェラシー」を使った場面は黒エンビで文句なし。
「ダンシング・ローズ」はダンスはかっこ良かったですが、ベージュのスーツがシャツと合っていなくて変。
「ゴールデンハート」はボレロ調の場面で、「ラ・カンタータ」の「熱愛のボレロ」に雰囲気が似ています。曲は「ローズ」で、盛り上がった良い場面でしたが、「Icarus」を思い出して、安蘭けいがいないのに・・と複雑な気分になる私のような人は、まぁ、あまりいないかな(^_^;)。
ロケットは退団の愛田中心。ロケットで可愛さが良く目立っていた愛田ならではの花むけですね。可愛かったです。
次回の観劇が当分先になりそうなので一応、初見の感想を書いておきました。
初日すぐの観劇、しかも一回しか観ていないので、もっと公演が練れた頃、もう一度見たらまた変わってくるだろうと思います。
■ JIMMY |
Date: 2001-10-04 (Thu) |
轟悠&月影瞳コンビ最後の公演。
「愛 燃える」は、何と言っても「砂漠の黒薔薇」の酒井先生なので、あまり期待はしないようにしたいですが、原作があるようですし、あらすじを読む限り面白そう。
中国物も久しぶりでしょうか。ぐんちゃん(月影)が精一杯綺麗に出てきそうで、それが一番楽しみかも(^_^;)。
いしちゃん(轟)が国王役っていうのも楽しみ。迫力たっぷりにお願いしたいです。
「Rose Garden」は、久しぶりの岡田先生のロマンチック・レビューですね! 雪組って、良さそうなショーが当たるなぁ・・(^_^;)。
構成はお決まりの通りになるのかな? 最近は名場面の再現続きでイヤになっていたのですが、「Asian Sunrise」が割と好きだったので、ちょっと気持ちは復活しています。
皆様の書き込みをお待ちしております!